医療用医薬品 : セレコックス (セレコックス錠100mg 他)
→薬疹に関する副作用は0.1%〜1%未満で、毒性表皮壊死融解症(TEN)や皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)などは投与開始後1ヶ月以内に出現しています。
現病歴 初診の約6カ月前から膝関節痛のため,頓用薬として処方されていたセレコキシブ錠100mgを内服して数日後に,左膝に瘙痒を伴う皮疹が出現し,ステロイド外用薬を塗布すると約10日で消退するエピソードが3回あった。4回目となる今回は,初診の2日前に同剤を1錠内服し,同じ部位に皮疹が出現したので当科を受診した。
副作用
0.1〜1%未満
そう痒症、顔面浮腫、紅斑性皮疹、湿疹、蕁麻疹、薬疹
本剤の投与により、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)等の重篤で場合によっては致命的な皮膚症状が発現するおそれがあり、多くの場合、これらの事象は投与開始後1カ月以内に発現しているので、治療初期には特に注意すること。(アステラス製薬株式会社 セレコックス錠100mg/セレコックス錠200mg 添付文書)
副作用モニター情報〈462〉 セレコキシブの副作用と投与上の注意点
【A】セレコックスによる皮疹はPMDAによる医薬品副作用データベースを確認したところ、21件の報告があり、服薬当日から12日後までの2週間以内での発現が非常に多いと考えられる。中毒性表皮壊死融解症やStevens-Johnson症候群などは投与開始後1ヶ月以内に発現している。
要約 74歳,男性.関節リウマチに対しメトトレキサートが処方されていたが帯状疱疹の発症に伴いセレコキシブに変更された.8日後より四肢に紅斑が出現し拡大してきたため当科を受診した.初診時顔面は腫脹し,体幹,四肢に浮腫性紅斑を認めた.病理組織像では多形紅斑の像を呈しており,セレコキシブの内服を中止したところ紅斑は消失し治癒した.その5週後にセレコキシブの薬剤パッチテストを行ったところ陽性であった.以上よりセレコキシブによる多形紅斑型薬疹と診断した.セレコキシブは消化管障害,腎機能障害を軽減する消炎鎮痛薬として整形外科領域の患者に使用されることが多く,薬疹報告例も多い.今後も保険適応の拡大に伴い薬疹報告が増えると予想されるため,過去の報告例をまとめて文献的考察を行った.
薬剤性過敏症症候群(DIHS)は比較的限られた薬剤により発症する重症薬疹であり、遅発性の発疹、発疹の遷延化に加えて発熱、肝機能障害、白血球増多、異型リンパ球出現、好酸球増多などを認める。セレコキシブ(セレコックス®)は選択的COX-2阻害薬として、従来のNSAIDsと同等の抗炎症作用を有しながらも、副作用の少ない薬剤とされている。セレコキシブによる薬疹の報告例はこれまでに散見されるが、セレコキシブによるDIHSは極めて稀である。DIHSをきたすことが多い薬剤として抗てんかん薬や高尿酸血症治療薬、抗不整脈薬などが報告されているが、セレコキシブにてもDIHSは起こり得るため、本剤投与中に紅斑、発熱、肝機能障害などを認めた場合にはDIHSの可能性を考慮する必要がある。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のセレコキシブ(商品名:セレコックス)は、炎症反応にかかわるシクロオキシゲナーゼ2(COX2)を選択的に阻害して、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示します。副作用は、心血管系疾患を持つ人に血栓塞栓の危険が増大することや、ショック、過敏症状、消化器症状、腎臓・肝臓障害、重い皮膚症状など様々です。
一方で、従来のNSAIDsはCOX1も阻害する非選択的なものでした。主な副作用が消化管に出たため、セレコキシブはその副作用軽減を期待して開発されました。その点で他のNSAIDsよりセレコキシブは使いやすい印象があります。ところが実際の消化管の副作用発現率は従来のNSAIDsとの差はありません。
当モニターにも、セレコキシブによる消化管穿孔や出血性胃腸炎などの重篤な副作用報告が入っています。
症例)70代女性。骨折後の痛みに200mg/日投与で落ち着いていたが、自己判断で疼痛時に頓服で増量していた。消化管出血により服用中止し回復。投与期間は不明。
なお、最も多くみられた副作用は皮膚症状で、スティーブンス・ジョンソン症候群や多形浸出紅斑などの重篤なものもありました。
2015年度第3四半期には、9件報告がありました(薬疹3件、発疹・湿疹・掻痒等2件、消化管出血、肝障害、CK上昇、胃部不快感・胸苦しさ等各1件)。報告は減っていません。年齢は50代2人、60代1人、70代4人、80代2人で、用量はいずれも200mg/日でした。副作用発現までの期間は、薬疹等の皮膚症状では2~20日、その他は4カ月以上~数年の発症でした。
高齢になると多くのNSAIDsの排泄能力が低下します。特に酸化的代謝を受けるセレコキシブ等では、血漿濃度が上昇することや腎機能の低下を考慮し、用量・投与間隔は慎重に設定しましょう。添付文書にあるように「有効最小量を可能な限り短期間投与することに留め、長期にわたり漫然と投与しない」ことが重要です。