フォシーガの心不全への効果について、ここまで解説したことをまとめました。


心不全では交感神経が興奮しすぎて過度の血圧上昇、脈拍増加などが起きており、心臓に負担がかかっています。
β遮断薬は、β受容体(心臓に多く存在している交感神経から指令を受ける受容体)の働きを抑えることで、血圧を下げたり、脈を遅くしたりして、働きすぎの心臓を休ませて心臓を元気にします。
少ない量から始め、血圧・脈拍・症状をみながら徐々に増やしていきます。


慢性心不全では昨年以降、新規の作用機序を持つ薬剤が相次いで登場しています。

日本で承認されているフォシーガの効能又は効果は、「2型糖尿病」、「1型糖尿病」、「慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。)、および「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。)」です。

フォシーガと心不全に関連してよくある質問にお答えしていきます。

Β遮断薬は、心拍数を下げるだけでなく、心臓のポンプ機能も下げる作用があり、心不全には少し好ましくありません。
新しく使用できるようなったイバブラジンは、心拍数を下げることに特化した薬で、心臓の拍動リズムを作り出している洞房結節に作用して、心臓のポンプ機能を悪化させることなく脈拍だけをゆっくりにします。

心不全の症状は左心不全と右心不全に分類されます。左心不全は左心房・左心室の異常、右心不全は右心房・右心室の異常が原因となります。左心不全、右心不全はそれぞれ単独で起こり得ますが、左心不全が長引くと右心系にも負担がかかり、右心不全を併発することがあります。この状態は両心不全と呼ばれます。

これらは、上記のDELIVER試験の結果に基づき変更されました。今回の電子添文の改訂により、フォシーガは左室駆出率を問わず慢性心不全患者の治療薬として使用いただけるようになりました。

昨年11月には、小野薬品工業のHCNチャネル遮断薬「コララン」(一般名・イバブラジン塩酸塩)が、今年8月にはノバルティスファーマのアンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬「エンレスト」(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)が発売。11月には、アストラゼネカのSGLT2阻害薬「フォシーガ」(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)も適応拡大の承認を取得しました。


慢性心不全にSGLT2阻害薬が処方できるようになった。昨年11月のダパグリフロジンに続き、今年後半にはエンパグリフロジンも承認を見込む。

虚血性心疾患や弁膜症など、心不全の原因となった疾患に対して手術療法が有効なことがあります。

虚血性心疾患に対しては、狭窄・閉塞した冠動脈に対する手術を行います。カテーテルを用いて狭窄・閉塞部位を拡げる経皮的冠動脈形成術(PCI)や、外科的に胸部を開いて狭窄した冠動脈に迂回路を作る冠動脈バイパス手術(CABG)が行われます。

弁膜症の手術には、弁膜を修復する方法(弁形成術)と、弁膜を置換する方法(弁置換術)があります。胸部を開き、心臓の拍動を停止させて手技が行われるため患者さんに対する侵襲度が高いものでしたが、最近では小さな切開で行われる手術(低侵襲心臓手術;MICS)や、大動脈弁狭窄症に対してカテーテルで弁置換術を行う経皮的カテーテル大動脈弁置換術(TAVRもしくはTAVI)、僧帽弁閉鎖不全症に対してカテーテルで弁形成術を行う経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip)が登場しました。そのため従来手術に耐えられなかった高齢の患者さんなどに低侵襲で手術を行えるようなりました。

できる?』」の初回は、フォシーガを取り上げます。慢性心不全の患者さんに「フォシーガ ..

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE 阻害薬)かアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)と交感神経の働きを抑えるβ 遮断薬を併用し、場合によってはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を追加します。
この治療で効果が不十分なときにはACE 阻害薬(あるいはARB)をアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)に切り替えます。
ACE 阻害薬またはARB、MRA、ARNI は、心不全の初期から継続して使用します。
最近では、SGLT2 阻害薬やイバブラジンも使用するようになってきています。

なぜか? SGLT2 阻害薬による血糖降下作用はインスリン分泌に依存しない ..

薬物療法および原因に対する手術療法を組み合わせても治療の難しい心不全に対しては、心臓が収縮するタイミングのズレを電気刺激で修正する心臓再同期療法や、補助人工心臓、心臓移植などの手術が検討されることもあります。近年では再生医療の技術を用いた心筋細胞シートの研究が進み、実用化が期待されています。

3) 日本循環器学会・日本心不全学会:心不全治療における SGLT2 阻害薬の適正使用に関する.

心臓のポンプ機能の違いにより心不全は、左心室の収縮機能が低下したHFrEF〔ヘフレフ〕、左心室の収縮機能は保たれているが左心室の拡張機能が障害されているHFpEF〔ヘフペフ〕、HFrEF〔ヘフレフ〕とHEpEF〔ヘフペフ〕の中間のHFmrEF〔ヘフエムレフ〕の3つに分類されます。
HFpEF〔ヘフペフ〕は、近年増加してきており心不全患者の約半数を占めます。

心不全患者において、SGLT2 阻害薬(ダパグリフロジンとエンパグリフロジン)は 2 型

sGC刺激薬は心筋細胞内のcGMPという物質を増加させ、心不全の改善効果があります。cGMPは心筋の線維化・炎症などに対して抑制的に働き、心筋のリモデリングを防ぎます。既存の治療薬や新薬であるARNIに上乗せしても効果があることが示されています。

心不全に対するSGLT2阻害薬の使い方についてまとめてみた 2023.12

心不全の薬物治療は、「予後の改善」と「症状の改善」の2 つの視点で行いますが、心臓のポンプ機能の違いによって、予後を改善するために使用する薬が違ってきます。
心臓のポンプ機能は、左心室から血液を駆出する能力を心臓エコー検査で測定することでわかります。

SGLT2阻害薬は心不全でも腎障害でも頼りになるマルチプレイヤー

民間調査会社の富士経済によると、国内の心不全治療薬市場は2028年に19年比135.6%増の1323億円に達すると予測。利尿薬「サムスカ」(トルバプタン、大塚製薬)への後発医薬品参入で21年ごろに一時的に縮小するものの、22年以降は複数の新薬の発売によって市場は拡大に転じる見通しです。

SGLT 2阻害薬がなぜ慢性腎臓病、慢性心不全に用いられるのか?

イバブラジンは心拍数を調節する機能を持ち、心拍数を低下させることで心臓の負担を軽減する作用があります。イバブラジンは、β遮断薬とは異なる作用機序で心拍数を直接的に低下させるため、β遮断薬のみでは有効な心拍数コントロールが得られない患者さまに適しています。

心不全がある場合; IgA腎症がある場合; 高血圧、貧血、脂質異常症、高尿酸血症が ..

心不全を発症した慢性心不全の状態がステージC で、心不全の増悪を繰り返して治療が困難な状態(ステージD)になり、最期を迎えることになります。
急性心不全で初めて入院した後1 年以内に心不全で再入院する人は4 人に1 人とされており、急性増悪(急性心不全)を繰り返すと心不全が重症化するので、ステージC 以降は症状の改善や心不全の増悪を防ぎ、再入院しないようにすることが治療目標となり、終末期になるほど症状の軽減が重視されます。

AZ SGLT2阻害薬フォシーガ 日本で慢性心不全の効能追加を申請

心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、重大な症状を引き起こす疾患です。しかし、早期発見・早期治療が行われると、症状を改善し、生活の質を向上させることができます。定期的な健康診断を受け、症状があれば早めに医療機関を受診することが、健康を維持するために大切です。治療には薬物療法や手術療法があり、新しい薬剤や技術が登場し心不全の予後改善に期待が寄せられています。

血糖値を下げるホルモンであるインスリンが不足(インスリン分泌不十分)したり、はたらきが低下したりする(インスリン抵抗性)ことが原因 ..

ベルイシグアトは、既存の心不全治療では対処されていないNO-sGC-cGMP経路に作用することで心臓の機能を回復させるメカニズムを持ち、HFrEF患者5050人を対象としたP3試験では標準治療への上乗せで複合エンドポイント(心血管死と心不全による入院)のリスクを10%抑制。ジャディアンスもHFrEF患者3730人を対象としたP3試験で、同じ要素からなる複合エンドポイントを25%低下させました。